TOP > コラム > 見れば分かる「肉離れしそうな選手」の特徴とは?/サッカー日本代表やプロ野球選手も取り入れる正しい走り方

見れば分かる「肉離れしそうな選手」の特徴とは?/サッカー日本代表やプロ野球選手も取り入れる正しい走り方

COACH UNITED ACADEMYでは、3回に分けてサッカーに活きる「走り方メソッド」を紹介する。講師は、武藤嘉紀、槙野智章、宇賀神友弥、小林悠、谷口彰悟といった日本代表経験のあるサッカー選手から、プロ野球の阪神タイガース、オリックス・バッファローズなどで「走り方」の指導をおこなっているプロスプリントコーチの秋本真吾氏。第2回では、怪我につながりやすい走り方と、改善するための方法を教えてもらおう。(文・北健一郎)

この記事の映像は、COACH UNITED ACADEMYで公開中!
詳しくはこちら>>

Still0802_00002.jpg

<< 前回の記事を読む  次回の記事を読む>>

■どうして「肉離れ」は起きるのか?

スルーパスを追いかけていたFWが、突然走るのを止めてしまう...。ドリブルで抜かれたDFが、慌ててついていこうとしたところで倒れ込む...。

サッカーの試合中にこんな場面を見たことはないだろうか? 走っている時に、突然動けなくなってしまうのは、筋肉系のトラブルに見舞われた確率が高い。特に瞬発力に優れたアスリートの多くが悩まされるのが「ハムストリングス」と呼ばれる、太ももの裏側の筋肉群の肉離れだ。

「サッカーでも野球でもハムストリングスの肉離れはものすごく多くなっています」(秋本氏)

そもそも、なぜ肉離れは起こるのか?

秋本氏が見せてくれたのは、阪神タイガースへ走り方の指導におこなった時の映像だった。指導を始める前、球団スタッフが30メートル走のタイムを測定した時、1人の選手がバランスを崩してしまう。ハムストリングスの肉離れだった。

「肉離れになった選手が地面に着いた瞬間の姿勢に注目してください。自分の頭の真下より前に足が着いています。これが肉離れを起こしやすい姿勢になります」

とはいえ、速く走ろうと思った時に、足を前に伸ばすのは自然な行動のようにも思える。なぜ、前に足を着くことが、肉離れの原因になってしまうのだろうか。

Still0802_00000.jpg ※写真は「肉離れ」が起きた時の阪神タイガース選手の一例

秋本氏は子供の頃に誰もがやったことのある遊びを例に説明する。「空き缶つぶし」だ。地面に置いた空き缶を踏みつぶす時は、身体に近い場所に置くことで強く足を踏み降ろすことができる。だが、身体から遠い場所に空き缶があると、うまくつぶすことができない。

「走る時も同じです。力を入れるポイント、場所というのが大事になる。力の入らない場所で接地すると、前に進むためには、膝裏だったり、腿裏だったりの筋肉を使って、進行方向より逆に筋肉を引っ張りながら、体を前に運ばなければなりません。最後の最後で足が離れる瞬間に、肉離れを起こしてしまうのです」

実は秋本氏も現役時代に何度も肉離れを経験している。肉離れをした瞬間の映像を見直すと、身体よりも前に接地したときに起こっていることがわかった。肉離れは筋肉の強さや弱さの問題だと考えられがちだが、正しい場所で接地できなかった時に発生リスクが一気に高まるのだ。

Still0802_00001.jpg

■カカトから接地する選手は怪我をしやすい

秋本氏はサッカー選手や野球選手の指導を始めてから、Jリーグやプロ野球の試合をチェックするようになったが、走り方を見れば「怪我をしそうな選手」はすぐにわかるという。

「カカトから接地している選手は、肉離れをしやすくなります」

スピードを上げようとする時、無意識のうちに足を前に出すと、必然的にカカトの近くで接地することになる。力が入りづらい場所で接地し、そこから加速しようとした時に、急激な負荷に筋肉が耐えられず肉離れを起こす。

「選手たちにトレーニングをする時には、今のような話を指導前に選手に映像を見てもらって、なぜ肉離れになるのか? を話します」

秋本氏が怪我をしやすい走り方を改善するためにおこなっているのが「マーカー走」だ。地面にマーカーを並べて、そこに足を着くことを意識しながら走る。その際のポイントがマーカーとマーカーの間を狭くすることだという。

「必然的に足を着く場所がつま先のほうになって、カカトから着く、足の裏から着くというのがなくなってきます。速く動かすのではなく、修正するポイントを意識して丁寧におこなうことが大切です」

具体的な動きはCOACH UNITED ACADEMY動画を見てもらいたいが、トレーニングの前後で明らかな変化が見てとれる。

「地面に着いていない、空中に浮いている足に注目してもらいたい。指導前は着いている足に遅れてきていますが、指導後は着いている足と同じタイミングで前に来ています。ピッチ(回転数)を高めるトレーニングをやっているわけではありませんが、つま先から接地するトレーニングをすることで自然とピッチも高まっていきます」

つま先から接地することで、自分の力を発揮しやすくなり、効率的に足を運ぶことができる。効率の良い走りができれば、筋肉に過剰な負荷がかからないので、怪我のリスクが下がる。

実際に秋本氏から指導を受けた選手は、スピードが伸びるだけでなく、怪我も少なくなっている。

Still0802_00003.jpg ※写真は秋本氏の指導を受ける小林選手(川崎フロンターレ)

■初速を高めるために必要なことは?

サッカーの動き出し、野球のベースランニング、陸上のスタートダッシュ...スポーツにおいては"初速"の重要性が非常に高い。ここでもポイントになるのは「足を着く位置」だと秋本氏は言う。

初速を高めることを目的として秋本氏がおこなっているのが「牽引走」というメニューだ。2人1組で、走る選手は腰にベルトを巻いて、後ろの選手に引っ張ってもらう。後ろ方向への力を加えられながら前に進んでいくためには、正しい位置に足を着くことが必要になる。

「一気に加速するためには、正しい場所で力を発揮しなければいけません。間違った場所で力を発揮してしまうと肉離れのリスクがあります」

もう一つ、秋本氏がポイントに挙げたのが「最初の姿勢」だ。牽引走では後ろから引っ張られながら前に進むために、前傾姿勢になる必要がある。

「走る時の姿勢はまっすぐな姿勢が大事だと言いましたが、最初からまっすぐな状態ではスピードに乗れません。ただ、前傾姿勢になっていても、頭から引いているほうの足まで、まっすぐになっていることが重要です」

Still0802_00005.jpg

牽引走では引っ張る側の力の入れ具合や、足を着く場所などが重要になる。トレーニングの具体的なポイントについては、ぜひCOACH UNITED ACADEMY動画で確認してみてほしい。

<< 前回の記事を読む  次回の記事を読む>>

【講師】秋本 真吾/ 1982年4月7日生まれ、福島県大熊町出身。
2012年まで400mハードルのプロ陸上選手として活躍。アテネ、ロンドンオリンピックの選考会をはじめ、ヘルシンキ、大阪、ベルリン、韓国世界陸上の選考会に出場。オリンピック強化指定選手にも選出。200mハードルアジア最高記録、日本最高記録、学生最高記録保持者。ハードル選手でありながら100mのベストタイムは10秒44。
2013年からスプリントコーチとしてプロ野球球団、Jリーグクラブ所属選手、アメリカンフットボール、ラグビーなど多くのスポーツ選手に走り方の指導を展開。2013年に地元、福島県「大熊町」のために被災地支援団体「ARIGATO OKUMA」を立ち上げ、大熊町の子供たちへのスポーツ支援、キャリア支援を行う。
2015年にNIKE RUNNING EXPERT / NIKE RUNNING COACHに就任。

この記事の映像を含む、全120本以上が月額980円で見放題!
詳しくはこちら>>