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プレーの選択を広げるファーストタッチと立ち位置/ソレッソ熊本のバイタルエリアで攻撃を前進させる練習法

サガン鳥栖のMF松岡大起選手を筆頭に技術力の高い選手を輩出し、近年注目を集めるソレッソ熊本。全国3位となった2018年度の「全日本U-12サッカー選手権大会」に続き、昨年度の大会でもJリーグのアカデミーとの連戦を勝ち抜き、ベスト8まで進出し、大会関係者から高い評価を受けた。

今回、『サッカー指導者のためのオンラインセミナー「COACH UNITED ACADEMY」』ではU-12を率いた三角将行氏に、ソレッソ熊本が取り組む「バイタルエリアで攻撃を前進させる正しいプレー選択と立ち位置」をテーマにトレーニングを行ってもらった。前編では、プレーの選択肢を広げるためのファーストタッチと立ち位置の確認、ボールへの関りについてトレーニングを進めていく。(文・森田将義)

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ボールの置き所は相手DFの立ち位置を確認して判断する

パスを繋いで試合の主導権を握っても、相手ゴール前まで進めなければ得点は生まれない。ソレッソ熊本ではウォーミングアップとして行うパス&コントロールから、攻撃を前進させる意識付けを行っているのが特徴だ。始めに行うのが選手をひし形に配置して行うボール回し。

左右の位置に選手が二人立ち、順番を待つ選手がDF役となるメニューだ。攻撃の選手にファーストタッチを意識させるのが狙いであるため、DF役はボールを奪うのではなく、受けた後に軽くアプローチするというルールで行う。

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攻撃側で重要なのは守備の立ち位置を見て、どこにボールをコントロールするのかを判断すること。メニューのスタート時はDF役が内側を切る位置に立っているため受け手となる選手は、パスが入るタイミングでDFから離れた位置でボールを引き出し、前進してから次の選手へとパスを出す。

身体が前向きでも足元にピタリと止めてしまうと、DFに寄せられ、前進できない。受けた際に空いている前方向にボールを流し、そのまま前進してからパスを出すのがポイントだ。

ただメニューをこなすのではなく、実際の試合を想定するのも重要で、DF役のアプローチを回避するためにも、出し手がパススピードも意識しなければいけない。

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選手が慣れてきたタイミングで、DF役が縦方向を切った状況でのボール回しへと移行する。1つ目のメニューでは空いた前方のスペースへと進んだ受け手だが、今回は縦を切られているため、代わりに空いた中のスペースへとファーストタッチでコントロール。上下の位置に立つ選手にクサビを入れてから、ワンツーできるよう素早くパスを出した選手のフォローに入るのがルールだ。

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1つ目のメニュー同様、ただメニューをこなしているだけだと受け手と出し手だけの関係になり、単なドリル練習になってしまう。

受け手はパスを受けた後の攻撃方向をしっかり意識するのが重要だ。受けた後もパスを出して終わりではなく、顔を上げてパスを出した選手の状況を確認してから、ワンツーがしやすい場所へと駆け寄らなければいけない。

実際の試合では縦を切られた相手を中央へのファーストタッチで回避しても、2人目のDFが縦パスを警戒して寄せてくる。そうした場面も練習から想定しておくために、横パスをするフリして縦パスを入れられる状況を作るなど、試合で活きる駆け引きを練習からしておくのがベストだ。

正しい立ち位置に立つためには、相手とスペースの確認が必須

ファーストタッチを意識付けした後は、立ち位置を意識させる。そのためのトレーニングが2対2+フリーマンのメニューだ。攻撃側がフリーマンを交えた3対2の状況で10本のパスを回したら、守備と交代。またはパスを連続で5本繋いだら1点、ワンツーで1点のポイントを与え、2点取ったら勝ちとなる。

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イメージするのは相手にゴール前を守られた状況だ。敵の数が多く、スペースが少ない状況であるため、良い立ち位置がとれないとシュートまで持ち込めない。正しい立ち位置を確認するのが、このメニューの狙いだ。

前提となるのはボールを持った選手の顔が見える位置にポジションをとること。次に距離感も重要だ。ボールを安全に受けたいからといって近寄り過ぎると受けた後にアプローチを受けやすいため、スペースを見つけて適度な距離をとらなければいけない。すると、DFは受け手を気にして、パスを通さない位置へとポジションを変える。そうした守備の動きを見て、受け手はまた新たなポジションをとらなければいけない。

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パス&コントロールと同様、実際の試合を想定してトレーニングを行う意識を持たなければいけない。パスを奪われないことが目的になってしまうと、DFから離れた位置に立ってボールを回しがちになる。

だが、試合で攻撃を前進させるためには縦パスを積極的に狙わないといけない。このメニューで言えば、2人のDFの背後にいる3人目の選手へのパスだ。3人目へのパスを出せるよう受け手の選手はDFが中を切れば、外側にボールを置いてパスを狙う。DFが縦パスを警戒し、外側を切っていれば、ファーストタッチで中央にボールを運んでから、DFの間にパスを通す。このようにパス&コントロールで身につけた動きをDFがいる状況でも意識させたい。

前編では基本となる動きを紹介したが、後編は実戦に近い形でのトレーニングを行っていく。

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【講師】三角将行/
1981年6月27日生まれ。筑波大学時代に少年サッカーの指導をスタート。卒業後は熊本県の高校で3年間教員を務め、2007年からソレッソ熊本のコーチに就任した。昨年度はU-12の監督に就任し、全日本U-12サッカー選手権大会出場に貢献。ソレッソでの活動に加え、世界で活躍できる選手の育成を行う「熊本から世界へプロジェクト」や「東京プルミエサッカーアカデミー」での指導も行う。