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青森県のジュニアチャンピオン「リベロ津軽SC」が実践する頭と技術を鍛える少人数トレーニング

昨今、コロナ禍の影響によりトレーニングをする場所や一度に参加できる人数の制限を受けるなど、平時のようなサッカーの練習というものを満足にできない状況もある。

そんな中、少人数&狭いスペースでもサッカー脳と技術を鍛えられる練習を実践しているリベロ津軽SC(青森県)の住谷学氏が行うトレーニングの事例を紹介したい。リベロ津軽SCは、「第99回全国高等学校サッカー選手権大会」で準優勝を果たした青森山田高等学校で主将を務め、2021年シーズンより浦和レッズへ入団する藤原優大選手を輩出するなど優秀な選手を育成するだけでなく、U-12の世代で、4年間連続で全国大会に出場するなど結果も残している青森県の強豪クラブだ。(文・内藤秀明)

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頭の回転を速くする鬼ごっこ

住谷氏が行うトレーニングは、指導者側の「頭を使いながらボールを触せたい」という意図が机上の空論になっていない。ミスが発生しない簡単すぎるトレーニングでは決してなく、ミスの多発による練習の崩壊も起こっていない、絶妙な強度でトレーニングが行われていた。

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まずはウォーミングアップとして「頭の回転を速くする鬼ごっこ」を行う。ボールを使わない鳥かごのようなもので、5人で協力して動きながら、ライン上に余る1人をエリア内の鬼から守るトレーニングだ。実際にトレーニングを行う際には、いくつかのポイントが存在する。

1つ目は、仲間同士で鬼に捕まりにくいポジションを常に意識し、周りの状況を見ながら予測して細かく自分の位置を変えていくことだ。周りのことを考えて動くことが大切で、隣にいる味方との距離が近すぎたりすると鬼に捕まりやすくなってしまう。また、コーンに向かって全力で走ってしまうと周りの状況を確認できなくなってしまうため、常に視野を保ち、鬼がどこに来るかを予測して自分の位置を変えていかなければならない。

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2つ目は、仲間同士で声を掛け合いながら、鬼の狙いが定まらないように良い距離感を保つことだ。隣の仲間やグループで声を掛け合わなければ、自分がどう動いていいのか分からなくなってしまう。狭い中でも声を掛け合って互いに良い距離感を保つことで、鬼がどこを狙っていいのか分からなくなる状況を作り出すのがポイント。鬼を操るように全員で協力して、余った1人を守らなければならない。

住谷監督は「鬼の背中側に仲間を2人置けるように素早く動くことが重要」とも語っており、常に鬼の動きを見ながら判断し、素早く動くことと必要以上に動きすぎないことを求めていた。

「素早く蹴れる場所」へボールを置く2タッチでのパス&コントロール

ウォーミングアップが終わったら、ボールを使ったトレーニングに入っていく。味方から受けたパスを1タッチ目で正確にトラップし、2タッチ目で他の味方へ蹴り返す練習だ。1タッチでボールを渡したり、トラップの際にコントロールが乱れないように気を付ける必要がある。パス回しを速くするために、2タッチ目で素早く蹴れる場所へボールをコントロールすることがポイントだ。

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住谷氏は「試合を想定して、強くて速いトラップの難しいボールを蹴ることが重要。そうすれば、ミスが起こっても練習になる」と声をかけており、ミスが起きても自分で対処できるよう実戦に近い形での素早いパス回しを求めていた。

1タッチ目でボールがしっかり止まらないとプレーのスピードが上がらないため、速いパスをしっかりと良い場所に収める必要がある。その1タッチ目をしっかり止めるための具体的なアドバイスとして、「膝が立ったままだと壁になってボールを弾き返してしまうから、膝のクッションを使わないいけない」あるいは「クッションを使えない時は、その場で少し飛んで上から下に力を落とすようなイメージでボールを置く」と住谷氏は言葉を送っていた。

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それでも1タッチ目が乱れてしまった場合は、ボールを蹴れる位置に素早く体を動かすことがポイント。ミスを誤魔化すように3タッチに増やしたり、足だけを伸ばして修正しないようにすることが大切だ。

その後、頭を使ったパス&コントロールなど、より発展させたトレーニングを行い、トレーニングの難易度を高めていった。その詳細はぜひCOACH UNITED ACADEMY動画をご覧いただければと思う。

後編では、この前編で行ったトレーニングを踏まえた「3対1」や「6対2」のパス回しのトレーニングを行っていく。

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【講師】住谷学/

2009年より指導者を始め、2015年より全国大会の常連である青森の強豪チームのリベロ津軽SCでの指導を開始。2018年よりU-12監督、2019年より女子U-15監督を兼務。2020年よりアカデミーダイレクターも務める。