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帝京長岡高校のフィニッシュゾーンでコンビネーションを高めるパス&コントロールとシュートトレーニング

見る者を魅了する攻撃的なサッカーで、昨年行われた「第98回全国高等学校サッカー選手権大会」でベスト4入りを果たしたのが新潟県の帝京長岡高校だ。近年は全国大会での成績のみならず、MF酒井宣福(大宮アルディージャ)や、MF小塚和季(大分トリニータ)など個性豊かなJリーガーも多数輩出し、その育成方法は全国から注目を集めている。

今回、『サッカー指導者のためのオンラインセミナー「COACH UNITED ACADEMY」』では、帝京長岡のヘッドコーチと下部組織である長岡JYFCの代表を務める西田勝彦氏に、帝京長岡のサッカーの肝である「フィニッシュゾーンでのコンビネーション」を磨くためのトレーニングについて解説してもらった。(文・森田将義)

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パス&コントロールの鍵は、オフザボールにあり

自陣からのパス回しで相手ゴールを目指しても、ミスが多ければゴールまで持ち込めない。特にフィニッシュゾーンでは相手からのプレッシャーが強まり、パス&コントロールの精度が勝敗に直結する。帝京長岡高校の選手が高く評価される基礎技術の高さは、毎日の練習で行うパス&コントロールのメニューによって育まれている。

まず初めに行うのは、4人組でのボール回し。図のように四角形の四隅に選手を配置し、パスを受ける際はラインの中央に移動し、パス&コントロールを行う。選手の待ち時間を減らすために2球で実施し、右周りと左回りで行うのがルールだ。

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ポイントになるのは、選手同士の意思疎通。テンポよくボールを動かすためには、パスの出し手と受け手だけでなく、受け手が次に出す選手とも息を合わせなければいけない。パス交換を行う選手同士は自然と目線が合うが、受ける前に次にパスを出す選手と目を合わせるのは意識しないと難しい。互いの出したい位置と貰いたい位置の確認を習慣化するためにも、練習から強く意識すべきだ。

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受けた後の動きをスムーズにするためには、ファーストタッチでどこにボールを置くかも重要だ。ファーストタッチの種類は大きく分けて、3種類。受けてすぐパスを出せるようボールの勢いを止める、身体を開いてオープンに置く、ボールを奪いに来る相手からボールを守る。実際の試合で使えるパス&コントールを身につけるためには、ただメニューをこなすのではなく、トレーニングからの意識付けが重要だ。

一定時間をこなせば、クロスオーバーを交えたパス&コントロールに移行する。ライン上でパスを受ける所までは1つめのメニューと変わらないが、パスを出した後に受け手の背後を回るクロスーバーの動きを取り入れるのがルールだ。

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ジョグではDFに対応されてしまうため、練習からスプリントで移動するのを忘れてはならない。3つめのメニューでは、受ける前に中央の置いたマーカーに寄ってからボールを受ける動きが加わる。コーンをDFと想定し、寄ってから斜めに開いたり、膨らむなど相手が捕まえにくい動きとスピードの変化をつけるのが大事なポイントだ。

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帝京長岡高校のトレーニングを見ると、パス&コントロールの上達には、オフザボールの質が重要であるとよく分かるだろう。

相手DFを崩すにはイメージの共有と鋭さが必要

パス&コントロールでボール扱いの基礎を身につけると、DFを交えた4対2のパス回しへと移行する。攻撃側は7m四方のグリッド内でパスを繋ぎながら、DFの間を通すパスを展開。パスが通れば、フォローに入った選手に落として、ドリブルで進行方向のライン通過を狙う。守備側がボールを奪えば、素早く攻守が入れ替わるのがルールだ。

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守備側は間を通されないよう2人の間を締めて守るため、素早く左右にボールを動かしながら、ギャップを作れるかが鍵となる。ただし、パスを受けた選手に対し、素早く1人目が身体を寄せ、2人目のカバーリングの位置に入るため、簡単にはギャップは生まれない。ギャップにパスを通すためには、2人目のDFがカバーに入るよりも先にボールを貰える位置に移動するのがポイントだ。

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もし、間に合わなかっても、2人のDFが片方のサイドに偏っているのは攻撃側にとって好都合。パス&コントロールのメニューに学んだ、身体を開いてオープンに置くトラップから、素早く反対サイドに展開すれば、滞りなくパス回しが続けられる。ライン通過をするためには、DFの間にパスが通ると判断したタイミングで、3人目の動きも忘れてはいけない。

選手同士の息があってくれば、5人組でのシュート練習を行う。

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図の通り、ゴール前に5つのコーンを配置し、それぞれのコーンに立つ5人が同時に飛び出し、コンビネーションからシュートを打つのがルール。相手の警戒網を突破するためには、5人が崩しのイメージを共有しなければいけない。同時に、相手が捕まえられないよう鋭くPA内に入るのもポイントだ。単調な動きでは相手のマークを剥がせないため、ここでもオフザボールの動きが重要になる。

パスを出す選手から寄る動きと、離れる動き、パスを出した先の後ろを回り込んで走る、出たパスに対して斜めに走り込む動きと膨らむ動きの5を上手く使い分け、シュートまで持ち込む。フィニッシュまでに関与しない選手もプレーを止めるのではなく、GKが弾いたボールを狙う意識を忘れてはいけない。

こうしたトレーニングの積み重ねによって、見る者を魅了する帝京長岡の攻撃的なサッカーが成り立っており、指導法を含めた詳細はぜひ動画で確認して欲しい。後編では、より実戦的なトレーニングメニューを紹介していく。

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【講師】西田勝彦/

帝京高校、東海大学でDFとして活躍。ホンダルミノッソ狭山で引退後、高校時代のチームメイトである帝京長岡高校の谷口哲朗総監督の誘いを受け、長岡JYFCを設立。小学生、中学生の指導を行いながら、帝京長岡のヘッドコーチも務める。