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試合にピークを持ってくるためのコンディショニング術。その最前線とは?

Jリーグでの指導経験も豊富な専門家が語る、コンディショニングの目的

試合で最高のパフォーマンスを発揮するため、カギになるのがコンディショニングだ。いくら良いトレーニングをしたとしても、試合当日に疲労が残っていたり、エネルギーが不足していると、良いプレーをすることはできない。

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ヴァンフォーレ甲府の『フィットネスダイレクター』として活動する谷真一郎氏は、コンディショニングのスペシャリストだ。2012年にヴァンフォーレ甲府がJ2で優勝した際には、ケガでの離脱者を最小限に留めるとともに、チームが目指していた、攻守にアグレッシブなスタイルの土台を作り上げた。

谷氏はコンディショニングの目的を「試合当日、選手が活き活きとプレーできる状態にすること」と定義する。そのためには「週末の試合に向けて、1週間のオーガナイズが重要になります」と語る。

「サッカーの試合は週末に行われます。試合後、1日のオフを挟み、4日か5日で、次の試合に向けて準備をするケースが一般的です」(谷氏。以下同)

たとえばプロのケースを見てみると、日曜日に試合がある場合、翌日の月曜日がリカバリー、翌日がオフになることが多い。そして水曜日から始動し、木、金、土で準備をし、日曜日の試合に挑むという形だ。育成年代の場合は日曜日に試合があるときは、月曜日がオ
フ、火曜日からトレーニングという形が一般的だ。

「オフ明けの初日と2日目には筋力トレーニングや有酸素系トレーニング、高強度トレーニングを行い、3、4、5日目でスピードとキレを上げるトレーニングをして、試合を迎える形が理想です。指導者はどうしても、試合前日までハードなトレーニングをたくさんやりたくなりますが、量が多すぎると、試合当日に疲労が残ってしまうので、おすすめできません」

身体の回復を考えると、ハードな筋トレをした場合は72時間。高強度トレーニングをした場合は、最低でも48時間の休息が必要だという。

「1週間単位のコンディショニングも必要ですが、シーズンを通した1年単位のコンディショニングも重要です。日本ではオフシーズン、プレシーズン、シーズンと、1年間を3つの局面にとらえてコンディショニングをしていきますが、スペインなどヨーロッパのトップレベルでは、オフシーズン、プレシーズン、インシーズン、ハイシーズンと区切り、シーズン終盤の優勝や降格争いの中で、どれだけ力を発揮できるかという部分に主眼を置いています」

谷氏自身、ヴァンフォーレ甲府でJ1に昇格したときは、限られた選手層の中、シーズン終盤(ハイシーズン)にコンディションが落ちないように、シーズンを通して体重や筋肉量を計測し、監督や選手、メディカルスタッフと情報を共有することで、チーム全体のコンディションを高めていったという。

コンディショニングをサポートするアミノ酸

続いて、栄養面からコンディションをサポートする人に御登場いただいた。味の素株式会社でアミノ酸の研究開発を担当する山田敏之氏だ。

コンディショニングのために栄養と休息が必要なのは、多くの人が理解していることだろう。なかでもアミノ酸(タンパク質)が、コンディショニングに果たす役割は大きい。タンパク質は筋肉や内臓、髪の毛などを作る栄養素で、激しい運動によって筋肉が損傷すると回復が必要となり、そのような際にはアミノ酸がさらに必要になる。

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「スポーツ領域ではBCAA(分岐鎖アミノ酸=イソロイシン、ロイシン、バリン)が有名ですが、必須アミノ酸は、筋肉を構成する材料に使われています。なかでもロイシンは、筋タンパク質を合成するスイッチを入れる役目を果たします」(山田氏。以下同)

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激しいトレーニングで筋肉が損傷し、食事で栄養を補給する。その過程で回復が行われ、筋肉が肥大していくのだが、筋肉のタンパク質合成を助けるのが、ロイシンを始めとするアミノ酸なのだ。

「人間の体は60%が水分で、残りの40%の約半分がタンパク質です。タンパク質を作っているのが、20種類のアミノ酸です。アミノ酸は必須アミノ酸と非必須アミノ酸に分けられていて、必須アミノ酸は体内で作ることができず、食事などを通じて、外部から摂取する必要があります」

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アミノ酸は牛肉、豚肉、鶏肉などの肉類や魚介類にたくさん含まれている。しかし、牛や豚などは脂質も多く、消化吸収に時間がかかる。とくに激しいトレーニングをしている選手が、食事だけで十分なタンパク質を摂ろうとすると、大量の肉や魚や卵、大豆製品などを食べなくてはいけない。

そこで便利なのがアミノ酸製品だ。顆粒タイプのアミノ酸であれば、練習前や練習中、練習後など、時間、場所を問わず、手軽に摂取することができる。

「アミノ酸は摂取してから30分程度で吸収されるので、練習前後や試合のハーフタイムなどで摂取できるメリットがあります。また、就寝中に身体は回復するので、寝る直前にアミノ酸を飲むのもおすすめです。就寝直前に食事を摂るのは現実的ではありませんが、アミノ酸であれば、手軽に摂ることができます」

実際に多くのJリーガーもアミノ酸を積極的に摂り入れており、ヴァンフォーレ甲府のフィットネスダイレクター・谷真一郎氏は「選手は練習前後にアミノ酸を飲んで、身体のケアに役立てています」と話す。

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また、山田氏によると「シスチンやグルタミンというアミノ酸には胃腸の粘膜を保護する作用がある」という。運動時には筋肉だけでなく、内臓もダメージを受けるので、アミノ酸でケアをすることがコンディショニングに繋がる。食事で摂った栄養素をしっかりと吸収するためにも、アミノ酸のサポートがあると心強い。

昨今のサッカーのトレンドは「ハイスピードでハイパフォーマンスを出すこと」だ。そのために、高強度のトレーニングが連日行われている。激しいトレーニング後の疲労回復、栄養補給のための食事や休息を含めたコンディショニングは、ハイパフォーマンスを出す上で欠かすことができないものと言えるだろう。

指導者としては「試合当日にハイパフォーマンスを発揮するためにはどうすればいいか?」という視点を持ち、トレーニング後の栄養補給や休息に目を向けることで、選手のポテンシャル、ひいてはチームの力を最大限発揮できるようになるはずだ。

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