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サッカーの仕組みを理解させるための練習づくりとは?/ポジショナルプレーを理解するための"林舞輝流"セミナー

育成年代に対する指導に正解はなく、多くの指導者が試行錯誤しながら選手たちと向き合っている。その向き合い方は様々だが、中には欧州の最新トレンドを、自チームに落とし込めないかを模索しているコーチも一定いるのではないだろうか。

最新の考え方でいうと、昨今サッカー界を賑わせているポジショナルプレーもそうだろう。この概念自体は、ある程度、理解できるかもしれないが、それを自チームに生かす方法を見つけることは容易ではない。

しかし、現在25歳の若さでJFL・奈良クラブの監督を務めている林舞輝氏は、「育成年代にポジショナルプレーを落とし込むのは決して難しいことではなく、むしろ育成年代の方が理解させやすい」と語る。何故そのように言い切ることができるのか。

前編では、ポジショナルプレーの基本から、応用されたいくつかの戦術について解説いただいたが、後編ではそのポジショナルプレーを育成年代に落とし込む方法論を語っていただいた。(文・内藤秀明/編集協力・瀧本拓朗)

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ポジショナルプレーを理解する=サッカーを理解する

後編のテーマは「ポジショナルプレーを育成年代に落とし込むためのメソッド」だ。まず林氏は育成年代からポジショナルプレーを教えていくことについて、

「『理論としては理解できるけど、育成年代に教えていくのは難しいし無理だ』という声をよく聞きますが、僕はむしろ育成年代だからこそ理解させやすく、落とし込みやすいと思います」

「そもそもポジショナルプレーというものは革新的な戦術ではなく、サッカーの原理を突き詰めたものですから、『サッカーを知ってもらう』ことと変わりません。教えることは決して難しくありませんし、育成年代から理解が進めば本当に良い選手が育つと思いますね。そしてサッカーがもっと面白くなるはずです」

と、今回の前置きをして語っている。

少人数のトレーニングからスタートして落とし込む

その後、「なぜ育成年代の方がポジショナルプレーを理解させやすいのか」をホワイトボードを活用しながら以下のように説明した。

「前編では、『数の歪み(数的優位)、スペースの歪み(位置的優位)を前に前に運んでいくことがポジショナルプレーにおいて重要なポイント』と喋りましたが、人数の少ない8人制サッカーの方がより歪みを前に運びやすく、よりゴールに直結させやすい。つまり育成年代の方がポジショナルプレーとの親和性が高いと考えています」

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続けて、ポジショナルプレーを育成年代に落とし込む具体的な方法について、

「ポジショナルプレーを育成年代に落とし込むためには、人数が少ない方がゴールに直結するので、2対2や3対3、4対4など、より少人数の状況からスタートして数的有利やスペースの概念を教えることが重要になります。人数が少ない方が『どこに数的有利が発生していて、どこにスペースがあるのか』が分かりやすいですからね」

「また小学生でも絶対に理解できる概念なので、『今、浮いている選手はどこにいて、空いているスペースはどこにある?』という風に、数的優位や位置的優位といった難しい言葉を使わずに丁寧に教えてあげることもポイントになります。少人数での練習でこの考え方を身につけることができれば、あとは8対8でも11対11でも実践することは変わらないので、いつの間にか『今どこに数的優位があってどこにスペースがあるのか』が連続的に考えられるようになっているはずです」

とホワイトボードを活用しながら語った。

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後編動画では、ほかにも「練習メニューを作る上で重要な考え方」や、「ポジショナルプレーにおけるウイングの役割」、「育成年代でサリーダを実践する方法」など、育成年代にポジショナルプレーを落とし込む上で重要なヒントとなる話をいくつも語っている。

林氏は動画内で「ポジショナルプレーを理解することは、サッカーそのものを理解することにつながる」と話していた。指導している子どもたちにサッカーの仕組みをより知ってもらい、そしてより楽しんでもらうために、ぜひこの動画を活用してみてはいかがだろうか。

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【講師】林舞輝/
奈良クラブ監督。イギリスの大学に在学中、イングランド2部のチャールトンのU-10とスクールでコーチを務め、2017年よりポルト大学の大学院に進学。同時にポルトガル1部のボアビスタBチーム(U-22)のアシスタントコーチを務め、主に対戦相手の分析・対策を担当した。その後、ジョゼ・モウリーニョが責任者と講師を務める指導者養成コース『High Performance Football Coaching』に通い、2019年、23歳でJFLの奈良クラブGMに就任。2020年からは同クラブの監督を務めている。