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GKやDFのスピードがアップした!京都橘高校サッカー部が取り組む「ステップ・ワークのトレーニング」

2012年に選手権で準優勝を果たして以来、6年連続で全国の舞台に立つなど強豪校と知られる京都橘高校サッカー部。同部が取り入れるサッカーのスピードアップトレーニング「タニラダー」について、前回の記事に続き、速く走るための基礎的な身体の使い方を学ぶメニューを紹介していく。(取材・文・写真/森田将義)

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足が速くなるためのトレーニング

その1.ミニハードルを使って、膝の使い方を学ぶ
ミニハードルを短めの間隔で配置。まずはミニハードルの左側だけを使い、間を右足だけで着地していく。ポイントとなるのは前回紹介した「T」の字を意識し、ハンコを押すようなイメージで静かに着地すること。

この動きを理解できると次は速度を上げたり、ハードルの間隔を4段階に分けて広げながら、一歩の距離を広げていく。

身体の重心が下がると速度が落ちるため、膝を曲げ過ぎないことも大事だ。慣れてくると、1本走ることに左右の足を変えながらメニューをこなし、仕上げにはミニハードルを越えてからは素走りを行い、より実戦に近い形で学んだ動きの確認をする。

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その2.タニラダー+ミニハードルで、手を振り、顔を上げる意識を高める
高さの違う2種類の器具を用いたコースをここまで取り上げたポイントを整理して、走り抜ける。

より大事なのは、足だけを早く動かそうとしないこと。腕と足は連動しているので、腕をしっかり振ることによって、足の回転数を上げる意識を高める。

同時に足元を見ていては、実際の試合で大事な周囲を見る動きを身につけることができないので、顔を上げることも忘れてはいけない。

また、タニラダーは前回の記事で紹介した「パワーポジション」をとりやすいようにサイズを設計されているため、ラダーで動きに制限を加えることで自然と脳に正しい足幅を記憶させていく。

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その3.タニラダーを使って、横への動きを向上させる
ここまでは前への速さを身につけるメニューが主だったが、実際でのプレーでは横や斜めの動きも多い。

だが、日常で少ない横移動が慣れていない選手も多く着地の際にバランスを崩すことも。原因はジャンプの際に軸足が移動方向に対して、内側の足になっているから。重心が外側の足にするため、4マスあるタニラダーのマスのうち2マスを使って左右へのジャンプを繰り返すメニューによって、正しい横への動きを身につける。

大事なのは「パワーポジション」を見つけること。

選手によって身長、体重が違うために全員の幅は均一ではないので、メニューを行う前に足幅を変えながら地面を蹴り、自らにあったパワーポジションを見つける必要がある。

また、ピッチが人工芝か天然芝か、または土なのかによっても変わってくるため、試合や練習の前に試してみると良いという。

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このほかにもタニラダーにボールを加えるなど、より実戦的なメニューを行い、2時間の講習時間が終了。選手たちはこれまで知ることができなかった知識を学び、充実した表情を見せた。

「しなやかで速い選手」を求める京都橘。スピードアップの効果は守備の選手にも

京都橘は卒業後、名古屋グランパスに進んだ小屋松知哉選手を始め、現在もU-18日本代表に選ばれる岩崎悠人選手など攻撃に足の速い選手を起用するのが特徴の一つと言える。

米澤監督は「うちでは大きいだけの選手は求めていない。しなやかで速い選手を育てるのが目標。試合に勝つためには戦術や個人技がもちろん必要だけど、理屈じゃないそれ以外の部分も作らないとダメで、速さも試合を決める重要な要素の一つ。

だから、うちの場合は前の選手に速い選手が多い。戦術を実行するためにも足の速さは大事だと思う」。また、身長や体重など身体能力が秀でた選手が少なく、「身体を鍛えて当りに強い選手を育てるのではなく、しなやかで速い選手を育てることで、ボディーコンタクトを避ける」という目的もあり、タニラダーによる恩恵は少なくない。

もちろん、足が速くなるメリットは攻撃の選手だけではない。

米澤監督がアジリティに問題を抱えていると話すDF李明賢は今回の講習を受け、「僕は足の速さだけでなく、前や後ろへのターンが遅くて、試合になるとまったく相手に追いつけなかった。

でも、今日は自分が困っていること全てを教えてもらえて良かった。ウォーミングアップでやる際は形だけになっていたけど、今日は力の入れ具合やターンの仕方が分かったので勉強になりました」と口にした。

また、GK矢田貝壮貴も講習の成果を実感する一人。「GKはステップの動きを使う機会が多いので、凄く勉強になった。GKはコンマ何秒の動きが結果を大きく左右する。ボールを奪いに行ってすぐにポジションを戻す時や、スライドする時に役立つのでは思う動きがあった。DF裏へのボールに反応することも多く、速くなれば相手FWよりも先にクリアできる」と話した。

「毎日、これだけみっちりトレーニングできないけど、5分、10分の積み重ねによって、身体が思ったように動かせるようになったり、成果が表れてくる。今日はこれまで知らなかったラダーの使い方を学べたのできっちり継続して、自分たちの物にしていきたい」。そう米澤監督が話したように、京都橘にとって、今回の講習は非常に価値のある物だったことは間違いない。

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